全館空調の基礎知識 メリットとデメリットを深堀り
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そもそも全館空調とは
「全館空調」とは冷暖房によって家の中の室温を均質に保つ仕組みのことをいいます。しかしながら戸建住宅における「全館空調」の定義は非常にあいまいであり、呼び方もハウスメーカーによっては「全館冷暖房」と呼ぶこともあるなど統一されておりません。
戸建住宅には空気環境に規制や基準がないからこのような状態となっており、空気環境に関する基準が定められているのは延べ床面積が3,000㎡以上の非住宅建築物のみです。このように「全館空調」には定量的な基準が無い表現であるということをきちんと理解し、住宅選びを行うようにしましょう。
全館空調の家のメリット
- 家中の温度を均一に近づける事が可能
- 冷暖房機器の露出を減らせるため、住宅デザインの幅を広げることができる
- 空気を常にきれいな状態に保つことができる
- エアコンなどの冷暖房機器のメンテナンスにかかる手間を減らせる
室温を均一に近づけられる
全館空調の家における最大のメリットは「家の中の室温を均一に近づけられる」ことだと言われています。この快適さを知ってしまうと夏暑く冬寒い家には二度と戻れない、と言われているほどです。
「夏場は2階だけが異常に暑いということは起こらない」「夏の夜に寝苦しくなり、頻繁に目が覚めることがない」「冬場の廊下や脱衣所が寒くない」「冬の日の朝に布団から出られなくなることがない」などといった日常が実現します。冬場には浴室でヒートショックによる死亡事故が起こるなどと言われていますが、全館空調の家ではこういったリスクも抑えることが可能です。
冷暖房機器の露出が減らせる
一般的な家庭ではエアコンを壁にかけて設置しますので、その設置場所や存在そのものを意識しながら室内空間のデザインやレイアウトを考えなければいけません。また、屋外には室外機を設置しなければいけませんので、その分お庭の面積も圧迫されてしまうでしょう。
しかし全館空調の家であればそのような心配がなく、室内に露出する冷暖房機器が少ない・室外機も少ないなどといったメリットがあります。壁からエアコンが突出するデザインが好きではないというような方に適した住宅であるといえるでしょう。
空気をきれいに保てる
全館空調の家は室温を均一に保つことができるという室温的なメリットだけに留まらず、「空気をきれいに保つことができる」というメリットも得られます。これは全館空調の家に設置される設備には高性能な換気機能を持つものが多く存在するからであり、中には空気清浄機能や家庭用除菌機能を持つものもあります。
日本では年中さまざまな花粉が舞っているので、花粉症の方は窓を開けられず困っていることが多いのではないでしょうか。また、黄砂やPM2.5などといった物質を通さないフィルターが付けられる全館空調を導入することができると、より一層安心感を得られるでしょう。
メンテナンスを減らせる
全館空調の家では設置するエアコンの数が減らせることからメンテナンスにかかる手間も減らせます。ダクト式の全館空調であればダクト内にほこりが溜まるといった口コミ・評判も散見されますが、機械本体にフィルターが付いているため室内には侵入できないようになっています。
メンテナンスの頻度自体はメーカーによってバラバラですが、月に1~2回程度は掃除が必要なものも存在しますが、それは部分間欠冷暖房でも同じです。これらのメンテナンスはマストではなくとも省エネ効果を得るためには必要とされているもので、全館空調にすることで手間を減らせた分きっちりと行うことをおすすめします。
全館空調の家のデメリット
- 初期費用の負担が大きくなる
- 電気代が高額になってしまう可能性がある
- 発生した臭気なども家中に行きわたってしまう恐れがある
初期費用が大きくなる
一般的な壁掛けエアコンや据置式のストーブを導入するケースと比べると、全館空調の家にかかる設備の方が高額になることが多いです。
相場に大きな幅が出るのはメーカーや冷暖房方式によりますが、基本的には制御システムや配管が複雑なものであればあるほど高額になる傾向があります。さらに専用の空調室が必要になるケースや効果を得るためには家そのものを高気密・高断熱にしなければならないケースなどにおいては全館空調そのもの以外の費用が発生することもあります。
電気代が高額になる
全館空調の家では24時間常にエアコンを稼働させることになります。そのため季節や利用状況などによっては部分間欠冷暖房を導入するよりも電気代が高額になってしまう傾向にあります。しかしながら家庭用エアコンがもっとも電力を消費するのは温度を下げる時や温度を上げる時などといった「スイッチを付けてから設定温度になるまでの間」と言われています。そのためそれぞれの部屋でエアコンを頻繁につけたり消したりしているケースであれば、全館空調よりも電気代がかかっている可能性があるでしょう。そういった場合においては全館空調の方が電気代は安くなりますが、基本的には高くなる傾向にあります。
全館空調の家の
電気代はどれくらい?
臭気などが家中に行きわたる
送風によって家中の室温を均一に保つ全館空調の場合、発生した臭気なども家中に行きわたらせることになるでしょう。ただし法令では24時間換気が義務付けられていることから、基本的には2時間程度で家中の空気が入れ替わって臭いも解消することになります。とはいえきつい臭い・悪臭の場合は2時間も我慢できない可能性がありますので、ペットのトイレや生ごみ置き場などといった臭いの強い場所に関しては、別途換気扇を設置するなどして臭い対策を施しておくようにしましょう。
全館空調の家を建てるときの注意点
- 全館空調における冷暖房方式の違いを把握しておく
- 住宅そのものの断熱性・機密性を高める
- 頻繁に換気が可能なシステムの導入を検討する
- 窓の設置場所によって窓のタイプを変える
冷暖房方式の違い
全館空調と一口に言っても、その冷暖房方式はさまざまです。この方式によって特徴や必要となるコスト、設置方法が異なりますので導入する住宅に適したものを検討するようにしましょう。さらにハウスメーカーによって取り扱うことができる全館空調が異なるケースもありますので、採用できるものから選ばなければいけません。
- 天井吹き出し方式:天井の裏にダクトを配置することで、天井の吹出口から冷暖気を送る
- エアコン方式:1台の壁掛けエアコンにより家全体を冷暖房し、壁の採風口から冷暖気を送る
- 床下冷暖房方式:断熱した基礎部分に蓄熱することで輻射熱の冷暖房を、ガラリから送風も可能
- 壁パネル方式:壁にパネルを設置することで冷液・温液を循環し、輻射熱で家全体を冷暖房する
同じ全館空調という言葉でも冷気や暖気を対流させるタイプのほか、輻射(放射)熱を利用するタイプもあります。可能であればモデルハウスなどでその機能を体験してから選択することをおすすめします。
断熱性・機密性を高める
全館空調を導入するにあたっては「高断熱・高気密がセット」と言っても過言ではありません。断熱性が低い住宅であればせっかく快適な温度の空気を蓄えても住宅の外の気温の影響を受け、理想の室温でなくなってしまいます。そうなるとさらに室温調整をするために冷暖房が稼働しますので、必要以上に電気代がかかるでしょう。また、機密性が低いと蓄えた快適な温度の空気が外に流れ出てしまったり、外の空気が入ってくることで室温が変化してしまいます。さらに計画的な換気ができなくなる可能性もありますので、空気のよどみや結露・カビの発生などといったリスクも出てきてしまうでしょう。
頻繁に換気できるシステム
全館空調の家は基本的に1つのエアコンから家中に空気を送るため、換気がしっかり稼働していない家であれば1箇所の臭いが他の部屋まで行き届いてしまうことがあります。臭いの問題を解決するために必要なのが換気であり、その換気性能として30分で空気が入れ替わるような24時間換気を設置するようにしましょう。24時間換気にもさまざまな種類がありますので、どの24時間換気が適しているかをじっくりと検討して導入することをおすすめします。ただし換気についてはあらかじめ換気量の計算をしたとしても、実際にその通りの換気ができているかはわかりません。そのため引渡し前に換気量測定などを行い、期待通りの換気環境が確保できているかを確認しておきましょう。
窓のタイプを変える
全館空調の効率を最大化するために重要なポイントに「窓」があります。窓には強い日差しや西日の放射熱をカットする「遮熱タイプ」と放射熱を適度に取り入れて室内を暖かく保つ「断熱タイプ」があります。窓ガラスは日射を遮るだけでなく、うまく使い分けることも大切になりますので理解しておきましょう。この窓ガラスを家の方位に応じて使い分けることができると、冷暖房にかかる負荷を軽減する効果が期待できます。設計時に配慮してくれる工務店やハウスメーカーも存在はしますが、必ず配慮してくれるとは限らないため、住宅施工における打ち合わせなどにおいて「窓については遮熱タイプと断熱タイプを考慮してほしい」旨をきちんと伝えておくことをおすすめします。
まとめ
明確な定義が決まっていないからこそメリットやデメリットを理解し、自分の住宅に適した性能の「全館空調」を導入するようにしましょう。中には導入したものの思った通りの効果が得られず後悔している方もいらっしゃいます。そうならないよう、工務店やハウスメーカーと打ち合わせを重ね、後悔しない全館空調の家づくりを行いましょう。
メリットやデメリットについては優先順位があり、「このメリットはきちんと得たい」「このデメリットはあまり気にならない」などは個人の感覚によって異なるでしょう。自分の感覚を前提に「何を優先するのか」「どういったことを必ず避けたいのか」は事前に整理しておき、失敗しない・後悔しない全館空調の家になるよう努めましょう。